たぬき煎餅は代々、「こだわりの高級煎餅」を黙々と焼き続けてきました。昭和3(1928)年に創業し創業からほどなくして、昭和7(1932)年に、皇太后陛下(大正天皇御后・貞明皇后)より御買い上げの名誉を賜り、昭和10(1935)年に「宮内省御用達」になりました。
職人の技とは、言葉で説明するものではなく、多くの失敗を繰り返して、体で覚えるものです。教えてもらうのではなく、盗むものです。私もまた当主である父親の姿を常に目で追い、技を盗もうと必死になって学びました。そうして体得した技で、たぬき煎餅は焼かれています。
たぬき煎餅はまた、包装へのこだわりも持っています。昭和7年2月、初めて皇太后陛下にお品をお納めする時に、創業者・圓蔵は知人の画家・村上玉嘉に狸の絵を描いてもらい、その絵に自らの書を加えて包装しました。以後、たぬき煎餅のロゴは、この狸の絵になっています。

麻布十番にて店を再開した後、再開のお知らせをどのようにすればいいか考えて、字紋散らしで包装紙をつくることにしました。圓蔵には、天性の文化的な素質があり、非常に独特の味わい深い手書き文字で包装紙をつくったのです。結果として、多くのお客様にたぬき煎餅再会をお知らせすることができました。
現在では、栞をお読みになるお客様が少なくなったので、狸のマスコットをつくっています。おかげさまで、このマスコットは、好評を得ています。